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藤井浩(助教授) 分子研リポート2002 | 分子科学研究所

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Academic year: 2018

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218 研究系及び研究施設の現状

藤 井   浩(助教授) (分子スケールナノサイエンスセンター兼務)

A -1)専門領域:生物無機化学、物理化学

A -2)研究課題:

a) 酸化反応に関与する金属酵素反応中間体モデルの合成 b) 磁気共鳴法による金属酵素の小分子活性化機構の研究 c) ヘムオキシゲナーゼの酸素活性化機構の研究

d) アミノ酸の位置特異的ミューテーションによる酵素機能変換

A -3)研究活動の概略と主な成果

a) 生体内には,活性中心に金属イオンをもつ金属酵素と呼ばれる一群のタンパク質が存在する。これらの中で酸化反 応に関与する金属酵素は,その反応中に高酸化状態の反応中間体を生成する。この高酸化状態の反応中間体は,酵素 反応を制御するキーとなる中間体であるが,不安定なため詳細が明らかでない。酸化反応に関わる金属酵素の機能 制御機構を解明するため,それらのモデル錯体の合成を行った。メシチル基をもつ新規サレン配位子を用いて鉄錯 体を合成した結果,カテコールジオキシゲナーゼの活性中心と同じ構造を持つ錯体を初めて合成することができた。 その物性から,活性中心の構造と酵素反応の関わりを示すことができた。また,この錯体を低温下で酸化することに より,酵素反応中間体モデルを構築できた。

b) 自然界にある窒素や酸素などの小分子は,金属酵素により活性化され,利用される。活性中心の金属イオンに配位し た小分子は,配位する金属イオンの種類,配位子,構造によりその反応性を大きく変化させる。このような多様な反 応性を支配する電子構造因子がなにかを解明するため,磁気共鳴法により研究を行っている。金属イオンやそれに 配位した小分子を磁気共鳴法により直接観測して,電子構造と反応性の関わりを解明することを試みている。タン パク質由来の配位子の役割を解明するため,ヘムタンパク質に配位したシアンイオンの13C -NMR シグナルの検出を 試みた。その結果,非常に大きく高磁場シフトした領域にシグナルの検出に成功した。さらにこのシグナルの化学シ フトと構造との相関を調べたところ,ヘムに配位する軸配位子の状態を知るプローブとなることがわかった。 c) 金属酵素が作る反応場の特色と機能との関わりを解明するため,ヘムオキシゲナーゼを題材にして研究を行ってい

る。ヘムオキシゲナーゼは,肝臓,脾臓,脳などに多く存在し,ヘムを代謝する酵素である。肝臓,脾臓の本酵素は,胆 汁色素合成に関与し,脳に存在する本酵素は情報伝達に関与していると考えられている。本酵素の研究は,これら臓 器から単離される酵素量が少なく,その構造,反応など不明な点を多く残している。最近,本酵素は大腸菌により大 量発現することができるようになり,種々の物理化学的測定が可能になった。本研究では,大腸菌発現の可溶化酵素 と化学的に合成したヘム代謝中間体を用いて本酵素による酸素の活性化およびヘムの代謝機構の研究を行ってい る。本酵素の酸素活性化中間体である過酸化水素付加体の構造をE ND OR により研究した。その結果,反応に関与す る第2のプロトンが存在することがわかった。

d) 我々多くの動物は,生命エネルギー合成に酸素を利用しているが,酸素の乏しいところで生育する菌類やバクテリ アなどは窒素をエネルギー合成に利用している。これらの菌類やバクテリアは,酸素の代わりに硝酸イオンを電子 受容体として利用している。硝酸イオンは,菌体内のさまざまな金属酵素により亜硝酸イオン,一酸化窒素,亜酸化 窒素と還元されて,最終的に窒素になる。これらの菌類は,この反応過程で環境破壊につながる窒素酸化物を分解す

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研究系及び研究施設の現状 219 るため,環境保全の面で最近大きな注目を集めている。我々は,これら一連の酵素の中で,亜硝酸還元酵素に焦点を あて研究を行っている。菌体から本酵素を単離する研究は古くから行われているが,不明な点が多い。本研究では, 本酵素の機能発現機構を解明する目的で,ミオグロビンという酸素貯蔵タンパク質をミューテーションにより亜硝 酸還元酵素へ機能変換することを行っている。

B -1) 学術論文

R. DAVYDOV, V. KOFMAN, H. FUJII, T. YOSHIDA, M. IKEDA SAITO and B. M. HOFFMAN, “Catalytic Mechanism of Heme Oxygenase Through EPR and ENDOR of Cryoreduced Oxy-Heme Oxygenase and its Asp140 Mutants,” J. Am. Chem. Soc. 124, 1798 (2002).

H. FUJII, “13C-NMR Signal Detection of Iron Bound Cyanide Ions in Ferric Cyanide Complexes of Heme Proteins,” J. Am. Chem. Soc. 124, 5936 (2002).

H. FUJII and Y. FUNAHASHI, “Trigonal Bipyramidal Ferric Aqua Complex with Sterically Hindered Salen Ligand as a Model for Active Site of Protocatechuate 3,4-Dioxygenase,” Angew. Chem. Int. Ed. 41, 3638 (2002).

B -3) 総説、著書

H. FUJII, “Electronic structure and reactivity of high-valent oxo iron porphyrins,” Coord. Chem. Rev. 226, 51 (2002). H. FUJII, “Oxygen activation mechanism of heme oxygenase,” Chemical Industry (in Japanese) 53, 18 (2002).

B -4) 招待講演

H. FUJII, “Catalytic Mechanism of Heme Oxygenase: Role of Highly Conserved Aspartate for Oxygen Activation,” Second International Conference Of Porphyrins and Phthalocyanines, Kyoto (Japan), June 2002.

藤井 浩, 「ヘムオキシゲナーゼによる酸素分子の活性化機構とそれによるヘムの代謝」, 学術創成研究研究会, 岡崎, 2002 年 12 月 .

C ) 研究活動の課題と展望

これまで生体内の金属酵素の構造と機能の関わりを,酵素反応中間体の電子構造から研究したきた。金属酵素の機能をよ り深く理解するためには,反応中間体の電子状態だけでなく,それを取り囲むタンパク質の反応場の機能を解明することも重 要であると考える。これまでの基礎研究で取得した知見や手法を活用し,酵素タンパクのつくる反応場の特質と反応性の関 係を解明していきたいと考える。さらにこれらの研究成果を基礎に,遺伝子組み替えによるアミノ酸置換の手法を用いて,金 属酵素の機能変換および新規金属酵素の開発を行いたい。

参照

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